☀️Weather Cheack☁️ページへ

ロス・オブ・テールローター・エフェクティブネス Loss of Tail Rotor Effectiveness (LTE)【ヘリコプターの危険な空力シリーズ】

  • URLをコピーしました!

ヘリコプターの危険な空力シリーズ第6弾は「ロス・オブ・テールローター・エフェクティブネス」です。名前がクソ長いので「LTE」と呼んでいますね。

通信規格のLTEではありませんよ。

名前の通りテールローターの推力を失う現象です。

  • LTEとは何なのか
  • LTEはなぜ起きるのか
  • LTEになりやすい状況
  • LTEの回復方法
  • LTEにならないために

を解説していきます。

この記事を読んでLTEへの理解を深めてテールローターを有効に使いましょう!

目次

LTEとは?

ロス・オブ・テールローター・エフェクティブネス:Loss of Tail Rotor Effectiveness (LTE)

Loss:失う
Tail Rotor:テールローター
Effectiveness:効果

LTEとは?

シングルローターでテールローターを有する機体で空力的にテールローターが推力を発生できなくなる現象。

LTEはテールローターの機械的な不具合ではなく、空力的にテールローターが推力を発生できなくなってしまう現象です。

LTEは主にテールローターを有するシングルローターの機体で発生します。

テールローターではなくメインローター同士でトルクを相殺する「2重反転式ローター」の機体ではLTEは発生しません。

またシングルローターでも「ノーター方式」の機体はLTEに陥ることはあるがその影響はテールローターに比べると少ないと言われています。

MD900

LTEはなぜ起きるのか?

LTEはメインローターの「セットリング・ウィズ・パワー」と似ています。

セットリング・ウィズ・パワーはメインローターの下向きのダウンウォッシュに対して機体の降下による下からの空気流が大きくなると渦が大きくなり揚力を発生できなくなるものでした。

LTEもテールローターが発生する風に対して反対方向の空気流が強くなると、テールローター付近の空気流が乱れて推力が発生できなくなります。

メインローターが反時計回りの機体で考えてみます。

メインローターの回転方向とは逆の方向にトルクがかかります。この場合は右ヨーイングが発生します。

この右ヨーイングを止めるためにテールローターが右に推力を発生させています。

推力を右に出しているということは空気の流れは右から左に流れていきます。

この場合テールローターは右から風を受けた方が有利で左から風を受けると不利になります。

テールローターの空気流に反した左からの空気流が強くなると、テールローターは空気を左に流すことができず、その結果推力を発生できなくなります。これがLTEです。

機体にかかるトルクとテールローターの関係

LTEになりやすい状況

LTEは低速時に発生しやすいです。

前進飛行中はバーティカルスタビライザー(垂直尾翼)に風が当たり、トルクを打ち消す方向に推力を出しているのでテールローターはほとんど働いていません。

対してホバリングや低速飛行時はバーティカルスタビライザーはほとんど機能しておらず、トルクは全てテールローターによって打ち消す必要があるためテールローターの推力も大きくなります。

ホバリングや低速飛行中にLTEになりやすい機体に対しての風向きがあります。

メインローターが反時計回りの機体の例になります。

メインローターディスクの干渉(285°〜315°)

出典:Helicopter Flying Handbook

機体に対しての風向きが285°〜315°で風速が10〜30ktの場合です。

風速10〜30kt程度の風を左前方(10時方向)から受ける場合、メインローターが発生するボルテックス(渦)が風に流されてテールローターに吹き込みます。

右旋回をすると、この乱れたメインローターのボルテックスがテールローターに入り込むのでテールの推力が短時間に大きく変動することがあります。

この推力の変動にパイロットのペダル操作が追いつかなくなると非常に危険な状態になります。

風見効果(120°〜240°)

出典:Helicopter Flying Handbook

ヘリコプターは風見鶏と同じように風に立とうとする性質があります。これは正対風でも背風でも同じです。

なのでホバリングは風に正対すると一番安定します。突然ホバリングが上手くなったように感じますがこれは風のおかげです。背風でも同じように安定しますよ。横風を受けながらのホバリングは難しいです。

真後ろから風を受けている場合は風見効果によってヨーイングは安定します。

テールがこの領域に入ると風見効果によってヨーレートが急に大きくなります。

例えば右ホバリング旋回でテールがこの領域に入った時に風見効果によって旋回のレートが大きくなり機首方向の保持が難しくなります。

テールローターのボルテックス・リング・ステイト(210°〜330°)

出典:Helicopter Flying Handbook

メインローターが反時計回りに機体の場合テールの推力は右に出ていますが、テールローターが発生させる風は左側に出ています。

左横風を受けている場合、テールが発生する風と対抗することになります。

「セットリング・ウィズ・パワー」と似たような状態ですよね。

セットリングはメインローターが発生する下向きのダウンウォッシュに対して下からの空気流がある場合にメインローターで渦が発生し揚力を発生できなくなるものでした。

テールローターもメインローターと同じ原理で推力を発生させているので同じようなことが起こります。

テールローター周りの正常な空気の流れは右→左です。この流れにならないほどの左横風があるとテールローターにボルテックスが発生し、推力を出せず機首方向を維持できなくなってしまいます。

LTEの回復方法

メインローターが反時計回りの場合、予期しない機首の右旋転でLTEに気づくことができると思います。

回復方法は高度に余裕がある場合とない場合で変わってくるかと思います。

LTEの回復方法(高度に余裕がある)
  1. 左ペダルを一杯に踏み込むと同時にサイクリックを前方に操作して対気速度を獲得する。
  2. コレクティブピッチレバーを下げて出力を減少させる。
LTEの回復方法(地面付近)
  1. オートローテーションに入れる

高度に余裕は何も焦る必要はありません。

予期しない右旋転に入っても出力を下げて前進速度を獲得すれば回復できます。

地面付近でのホバリング中や高度に余裕がない時はオートローテーションに入れるのが最善かもしれません。

エンジンの出力が減れば右旋転の動きも小さくなります。

また高度に余裕がある場合でも右旋転を止められないようであれば一度オートローテーションに入れるべきだと思います。

LTEにならないために

最後にLTEにならないために注意すべきことをまとめます。

LTEにならないために
  • 背風では出来るだけ対気速度30kt以下にしない。
  • ホバリングやホバリング旋回を不利な方向でしない。
  • ホバリング旋回はゆっくりなレートで行う。
  • 急なヨーレートの変化に対応できるようなペダル操作を意識する。

風向風速によってどう動かせば機体にとって有利なのかを常に考えましょう。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次