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後退翼の失速【ヘリコプターの危険な空力シリーズ】

出典:wikipedia
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ヘリコプターの危険な空力シリーズ第2弾は「後退翼の失速」です。

ヘリコプターを操縦する上で必ず知っておかなければならない空力的に危険な状態です。

  • 後退翼の失速とは何なのか
  • 後退翼の失速はなぜ起きるのか
  • 後退翼の失速になりやすい状況
  • 後退翼の失速からの回復方法

を解説していきます。

目次

後退翼の失速とは?

後退翼の失速:Retreating Blade Stall

Retreating:後退する
Blade:翼
Stall:失速

後退翼の失速とは?

ヘリコプターの後退側の翼(ブレード)が失速、つまり迎角が大きくなりすぎて空気流が剥離し揚力を発生できなくなってしまう現象です。

そもそも後退翼が何なのかも解説しておきます。

後退翼とは

ヘリコプターは翼が回転することで揚力を生み出しています。

そのため飛行機のように機体が前に動き続けなくても浮いていられます。

ヘリコプターの最大の特徴ですよね。

ヘリコプターが前進飛行中もメインローターは常に回転しています。

従ってヘリの進行方向と同じ向きに動いている翼と逆方向に動いている翼があることになります。

メインローターが反時計回りに回転する機体であれば、機体の右側が「前進翼」左側が「後退翼」です。

後退翼の失速はVNEを決める要素

後退翼の失速は機体の速度性能の一つである「VNE」を決める要素になっています。

VNEとは(Velosity of Never Exceeded)の略で「超えてはいけない速度」つまり機体の最大速度です。

後退翼の失速が起きる原因

原因1.前進翼との相対速度差

前進飛行中は前進翼と後退翼では受ける空気の流れが異なります。

前進側は「ブレード速度+機体速度」で相対的な空気の流れは速くなります。

対して後退翼は機体の動きとは逆向きであるため「ブレード速度−機体速度」となり相対速度は遅くなります。

機体速度を100kt、ブレードの翼端速度を400ktとした時、前進翼と後退翼では200ktの差ができてしまいます

揚力の式にもあるように、相対速度が遅くなると発生できる揚力は減少してしまいます。

ヘリコプターには前進翼側と後退翼側で揚力の不均衡があることを理解しましょう。

原因2.ブレードの動きによる高迎角

揚力の不均衡はブレードがフェザリングやフラッピングをすることでこれを打ち消しています。

前進翼側ではフラップアップし迎角を減らすことで揚力を減らし、後退翼側ではフラップダウンすることで迎角を増やして揚力を増やしています。

FAAのHelicopter Flying Handbookの図がわかりやすいと思います。

出典:Helicopter Flying Handbook
前進翼のフラップアップと後退翼のフラップダウン
ブレードがメインローターディスクの揚力を均一にしている

また前進飛行中は、ローター面を前傾させるために前進翼側ではピッチ角を減らし、後退翼側ではピッチ角を増やしています。これはフェザリングによるものです。

この後退翼側のピッチ角増加とフラップダウンによって迎角が増加し、臨界迎角を超えると失速に至ってしまいます。

後退翼の失速が起きやすい状況

後退翼の失速が起きる根本的な原因は高速飛行によるものです。

高速での飛行に加えて以下のような時に後退翼の失速が発生しやすくなります。

重々量

機体の重量が重いと、それだけ多くの揚力が必要になります。

多くの揚力を発生させるためにローターのピッチ角は大きくなり、失速が起きる臨界迎角に近づきます。

高密度高度

高密度高度下では空気の密度が小さく、ローターの効率も悪くなります。

空気の密度ρが小さいため、その分ピッチ角を大きくして迎角(CL)を大きくすることで同じ揚力を保とうとします。

低密度高度の時よりもピッチ角が大きいため、その分臨界迎角までの余裕が少なく、早い段階で失速に至ってしまいます。

乱気流

乱気流によってブレードに当たる空気の流れが一時的に変わります。

それが迎角を減らす方向であれば高度が下がるだけですが、迎角を増やす方向になってしまうとそこで失速に至る場合があります。

高速飛行中は臨界迎角に近い状態のため少しの気流の変化で失速に至る可能性があります。

急旋回

ローターが反時計方向に回転する機体であれば「右」の急旋回が危険と言えます。

右旋回する場合、後退翼側(機体左側)のブレードのピッチ角をつけて迎角を増やします。

逆に前進翼側(機体右側)のブレードのピッチ角は減らして迎角を減らします。

これによりローター面が右に傾き旋回できますよね。

ただでさえ迎角が大きくなっている後退翼側でさらに迎角が増えると臨界迎角に達し失速する可能性は高いです。

後退翼の失速の兆候

後退翼の失速の兆候
  • 低周波の振動
  • 機首上げ
  • 後退翼側にロール

ローターを流れる空気が正常でない場合、やはり振動が発生します。

また後退翼側で失速、つまりローターが反時計回りの機体であれば、左側で揚力が発生できていないことになります。

後退翼の迎角が最大になるのは左真横なので、そこで空気が剥離し失速となります。

ジャイロプリセッションにより90°遅れた位置でブレードが最低位置となり、結果機首上げの動きになります。

後退翼側(機体左側)では揚力の発生ができていないため機体は左側に傾き始めます。

後退翼の失速の回復方法

最後に回復方法を確認しておきましょう。

後退翼の失速は後退側ブレードの迎角が大きいことが原因です。

従ってまずはコレクティブを下げてブレードのピッチ角を減らし迎角を減少させましょう。

それからサイクリックを引いて速度を減少させます。

後退翼失速の回復方法
  1. コレクティブを下げてブレードのピッチ角を減らす
  2. サイクリックを引いて減速する

やってしまいがちなミスとしては、最初にサイクリックを引いて減速しようとすることです。

こうするとフレア効果でローターの下面から空気が入り迎角がさらに増えてしまいます。

状況がさらに悪くなるだけですので絶対にやってはいけません。

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